舞台「ダブル」 感想

舞台「ダブル」を観劇しました。

去年10月振りの紀伊國屋ホール

 

《公演情報》

2023年4月1日(土)~4月9日(日)

紀伊國屋ホール

 

【キャスト】

宝田多家良 役:和田雅成

鴨島友仁 役:玉置玲央

轟九十九 役:井澤勇貴

冷田一恵 役:護あさな

今切愛姫 役:牧浦乙葵

飯谷宗平 役:永島敬三

 

Introduction:

天才役者とその代役という特異な関係性を鮮烈に描き、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞した野田彩子の漫画『ダブル』の舞台化が決定

 

天性の魅力で徐々に役者としての才能を開花させていく宝田多家良と、その才能に焦がれながらも彼を支える鴨島友仁。互いに「世界一の役者」を目指すライバルでありながらも、どうしようもなく惹かれあう二人の関係を繊細かつ大胆に描く。

https://www.nelke.co.jp/stage/double/

 

 まず前提としてこの公演は、原作を読んで真っ直ぐに思い浮かぶような、舞台「ダブル」とは異なるものではあったとは思う。

とはいえ私は、演劇をテーマとする舞台で限られた時間などを考えたらワンシチュエーションにするのは妥当かとはまぁ思ってはいたので、そこに対してどうこうってのはなかったです。

異なるものである、と書いたけど普通にキャスト出たときに飯谷がメインでいる時点でお察しではあったろうけど。

アフタートークの回でも原作者の野田彩子先生がここに一人劇団員を置きます、という話を聞き誰か聞いたところ飯谷と言われ誰!?になったという話があったぐらいなので(笑)

原作通りの2.5を期待した人にはウーンという感じかもしれない作りなのかもしれないけれども、つか文脈をほぼ知らない*1人間でも、揺らがせ/揺らがされる人間の感情がしっかりと描かれていて、それを読み取ることがちゃんと出来たので私は楽しかったです。

私は原作ありきの作品を映像化・舞台化するにあたって、それならではの表現をしてくれなきゃ意味がないと思うし、2.5次元舞台というよりかは演劇にこだわったあの作りは私は割と好きだった。

とはいえ全肯定というわけでもなく、今回の舞台における演出オマージュもわからないので、紗幕演出のダサさに倒れそうになったりはした(笑)

もちろん知識があるに越したことはないけど、それがわからないからあんまり面白くないと感じていた人がいるのもわかるな、とは思う作りではあったと思う。

結末がなんかややぬるっとしてたのも、完結してない作品だから難しいのかな、とは思いつつもふーん…となったし。

 ワンルームの中でこの作品は全て完結することによって"逃げ場"がないので、友仁さんとしての嫉妬、執着、偏った愛情が玲央さんの演技力も相まってあの空間に煮凝りになって留まっており、原作より強靭な友仁さんに感じられて大変味わい深かった。

それに一辺倒にあてられる和田多家良可哀想…(語弊)と感じるぐらいには(笑)

それが奇跡の化学反応を起こした話は後ほど。

 話の本筋ではないが舞台化した故の変更点として、男性キャストと共演するとあーだこーだ言う男オタに対する愛姫ちゃんの愚痴、漫画だとシンプルに世間の人間と芸能人の関係性としてのグロテスクさを表してるコマだと思うんだけど、舞台だと冷田さんとのラッキー百合シーンとして昇華されていてそのグロテスクさを際立たせていて、そこはかなり好きでした。酔っ払い愛姫ちゃんかわいいね。

 

 キャスト/キャラの話。

 さすが子役あがりの九十九さん、な表現が至高だった井澤勇貴さん

友仁さんと多家良の関係性に対してや、山崎を降ろされて友仁さんに任せる場面など、複雑な表情も多かったけどあまりにも絶妙な表現だった。

初級の前説が観たことない私でも明らかに上手いことはわかったし、終始最高だった。

正統な口上はもちろん、酔っ払った九十九さんとしてやる口上もどっちも観られてよかったな。

あと井澤さんにはオフショ感謝代をおひねりとして捩じ込みたいのですがそれはどこでできますか?

 牧浦乙葵ちゃんの愛姫ちゃん、登場の時から私の脳内イメージ通りの声と喋り方でびっくりした。

友仁さんにおつまみの作り方指南されるシーンの嫌悪感が滲んだ顔、「1人2役大変そうですね」に対するしれっとした顔とか、出演時間はそこまで長くないにしてもすごく印象的で理想的な愛姫ちゃんだったなあ。

 護あさなさんの冷田さん、漫画から出てきた?

強かで、優しくて温かい眼差しに多家良は守られて躍起させられてきたんだろうな…と思える素敵な冷田さんだった。あとシンプルに顔が好き。

 永島敬三さんの飯谷は’ない’話をする推進力になっていた…とんだ昇級だな飯谷…

わけわかんないことばっかりするのに説得力があって、説得力のある芝居をするからこそ、リピーターであろう人たちにはかなり愛されていた客席の空気ができていてよかった。名前が出ただけで笑い声起きてたもんな…笑

 

 玉置玲央さんの友仁さん。

まず、紀伊國屋ホールに響き渡る声が素敵で惚れ惚れした。

多家良に対する得も言われぬ湿度を持った感情を表す仕草一つ、「下手ではないけど上手くない」を「上手く」演る胆力、観ていて恐ろしさすら感じた…。

この舞台には私はどこにも属さない美味しそうなものを食べたいだけの人間として通っていたけど、玲央さんの友仁さんに毎回定価を払ったな…と思いながら紀伊國屋ホールを後にしていた。

何度観ても満足感が高いお芝居だったなあ。

 

 私はただの和田雅成さんの顔ファンで、この作品の名前は知っていたけど上演が決まってから原作を読んだ、ただのにわか。

美味しいとこだけ吸いたい雑多エンタメ妖怪なので、ぼんやりあらすじ見て面白そうだと思い、行ける日のチケットは押さえたけれども、原作を読み進めているうち、これを演るの…?とは正直思ってた。

世の中に「天才役者」ってどれだけ居るのかわからないけど、そもそもあの人の役作りってほとんどがキャラと自我の割合が競っているような感じだから、相性悪くね?と。

別にその役作りが悪いとは思わないし、キャラにまんまを見せられるんだったら原作観たり読んだりすればいいじゃんとすら思うけれども、あくまで宝田多家良としてはそれはどうなのかと。

実際初日はやっぱりピンとこなくて、芝居そのものがめっちゃ下手とかなわけではないから、なんでだろう…?と。

だって初日は初級の前説のところでスッ…と冷めたもん(正直者)

 でもあのほぼメタ的キャスト*2ばかりの今回の舞台において、多家良という”無垢”を担うには何者でもない役者を主演に対比として置くのは巧妙だったと思う。

友仁さんの隣でする、あの何も知らないような笑顔が空間の中で浮きだっていたのは多家良としては正解だと私は感じるし。

 初日マチソワ、アフトデー、楽日マチソワというだいぶ偏った行き方しかできなかったけど、何故か楽日マチネに入ったら急に芝居の説得力が増していたことに???となった。

BLの才能って私の脳ではうまく言語化できないんだけど、明らかに6日観たときまでは欠如していたそれが、楽日9日マチネで明らかに変わっているな…?と。

本人が文脈を理解が出来ないとかではないんだろうけど、数段も上手(うわて)の玲央さんが水をあげ続けていたお陰で急にそれが後半にかけて急速に開花したらしい。

最初からやってよぉ!と嘆いたけど、"水をあげ続けた"友仁と多家良の関係性により近づいていたからこそなんだな…と思った。

多家良自身が感情崩壊させるシーンは無言劇のシーン等各キーポイントとしてあるけれども、「好意」「拒絶」が一同に会し、舞台「ダブル」としての2人が収束に向かうシーンで、「好き」が決壊した和田多家良が大千秋楽に現れてビックリした。

前楽も友仁さんの服で涙と鼻水と拭ってもらってはいたけど、あの人の感情があんな決壊している姿見たことないよ…(笑)

それにつられてか今まで見られなかった泣いてるお客さんが居たんだけど、私は貴重なおもしろいものを目に焼き付けなきゃ!!の気持ちで紀伊国屋ホールのV列から双眼鏡を必死に構えていたよ。オタクってキショいね。

※これの3,4枚目は明らかに直後の顔

カテコでもその洪水が止まらなくて、それが理解・処理しきれなくて???に一番本人がなっていたのが本当に面白かったし、この奇跡をこの目で観られなかったら今後どれだけ後悔してたか…と思いましたね。

あれはほぼ和田だった気もするのだが、多家良と和田の2つの人生が板の上で重なってドロドロぐちゃぐちゃに混ざり合っていたのは確かで、こういうのを観るために私は現場に通うんだ!!と脳汁出まくりでした。

カテコラストで玲央さんの気持ちがものすごい溢れ方して和田さんのことをお姫様抱っこして帰ってたの、色々溢れすぎてて愛…になったし、緞帳が空気読んで2人が捌け切るまで半分で止められていたの面白かったな。この愛がなければ奇跡的なこの瞬間の目撃者となれなかったと思うので、玲央さんには一生感謝したい。(重い)

今のところ、2023年年間瞬間最高爆上げ場面(瞬間最高視聴率的な)の暫定トップですよ。知らんけど。(知らんのか〜い♪)

 

 

長々と書いたけど、原作者先生がなんやいうてめちゃくちゃ楽しんでいらしたので、私はそれで良いとおもいます!!

 

 

 この舞台は、当たり前のようで当たり前じゃないかもしれないと私は思う、キャスト皆が皆「楽しい」と口(※Twitter)にしていてそれが現れていたし、なんかこの板の上で生きてる命を生で感じなきゃ…と無意識にチケットを増やしたりなんなりしました。

そのぐらい楽しかったです。忘れたくないな…

 

この刹那的な輝きをみんな(イマジナリーみんな)に観てほしい…今後この映像が世に出ることもないだろうから…4月15日までなので…

https://eplus.jp/st-double/

 

普通に今度つかこうへい作品の上演が興味あるメンツであったら観に行こう〜。

 

 

余談①

この舞台、入口から爆上げ仕様で良かったなの思い出。
ポートレート個人も全員分買えばよかったと今更思いながらこれを書いている。

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余談②

配信観てたら、紗幕にバーン!って「初級革命講座 飛龍伝」って出てくるとこ、音楽差し替えられてる気がするんだけど、気の所為…?

現地は普通だったけど…。

有識者の方何かご存知でしたら(?)

 

*1:何故観に行ってたのか全然覚えてないんだけど、2015年のTriple Impactの「いつも心に太陽を」は学生チケットで観ていて、楽しんでいた記録がふんわり残っている。

*2:元ジ●ニーズJr.、元アイドル、劇団員