劇団柿喰う客「いまさらキスシーン」「八百長デスマッチ」「美少年」 感想

「ダブル」を観てからどうしても熱が落ち着かずうろちょろしていたところ、玉置さん、永島さんが所属する劇団柿喰う客のYouTubeチャンネルに辿り着いた。

中屋敷さん演出舞台は何度か観たことあっても、原液は浴びたことがなかったのですが、こんなに手軽に浴びられてもいいんですか?と観始めたらクセになっていた。

 

 

【いまさらキスシーン】


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 30分だし寝る前に観るか♪と何故か寝る支度万端状態(※布団に入る前)で鑑賞し、情報に溺れ脳味噌パンクさせて、フラフラと眠りについた。

絶対に寝る前に観るもんじゃなかった、それはそう。

寝て起きても、身体能力の高さとこのストーリー表現を出来る胆力を持つ玉置玲央さんにメロメロになってしまい、翌日は脳内にずっとひよりちゃんが生きていた。

※私はTravis Japan 川島如恵留くん担なので(?)ダンス、アクロバットが出来る人が大好き。

何にでもなれるんだな…この人は…恐ろしい…。

楽しくて怖くて面白くて痛くて可愛らしくて哀しい、10代のある意味の無敵さとその反面に起こりうるグロテスクさを孕んだあれこれにゾッとさせられる作品だった。

女子高生の無敵さにはピッタリと言わんばかりの疾走感で進んでいくお芝居。

コミカルな動きやアクロバティックなモーション、スピード感ありのままに目一杯詰め込まれた台詞、コロコロと変わる表情、どれをとっても目が離せなくて、30分が一瞬だった…。非常に面白かった。

玲央さん凄すぎて、数日の間に3回も観ちゃった。

 

 

八百長デスマッチ】


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 小学生1年生2人だけの*1の他愛もないくっだらない会話劇。

無垢な小学生たちの全力で刹那的な会話が、ほとんど全編通してユニゾンで展開されていく。

私は聴覚情報が一番過敏にはたらいてる自覚があるんだけど、この2人がユニゾンで話してるときの周波数が元々近いものなのか、もしくは合わせているのか、いずれにしても何故かとっても心地よく感じられてスッと世界に入り込むことができた。

何をするにも一緒な2人は限りなく似通っていても同じではないこと。

似ているからこそライバルであり、ライバルだからこそ信頼し合える2人は、2人でいることを最優先とし第三者を思い切って排除すること。

純粋な子供ならではのある種の残酷さや、何のしがらみのない心情/友情が描かれ展開されていく。

 それこそ、先述した「いまさらキスシーン」は高校生故に性的なしがらみ等も絡んでくるが、その様な概念がない小学1年生だからこそ出来る「いつも何時も一緒」≒「予定調和」≒「八百長」が言葉通りギュッと凝縮されていて面白かった。

小学生達の戯れを、より臨場感が得られる「八百屋舞台」で行われていたのも何より意味が感じられて良かったな。

 

 

【美少年】


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 主人公アゲ・ヒバリは'美少年'であることをアイデンティティとして形作られていたが、ジャノメ・テイに"美しさ"を搾取されたことにより自らが動物園にいる動物と変わらない価値であったことを知る。

'美しい'は一見褒め言葉のように聞こえるが、一辺倒にそれしか与えられなかったら、表裏一体で呪いの言葉ともなり得る。

この話は美しいという価値しか与えられなかった周りの大人のせいで、それをアイデンティティとして生きるしかなかったヒバリの話だ。

また、性的な搾取、時間の搾取、金銭的な搾取 etc.…様々な搾取をテーマとしているとも感じた。

この話はフィクションであるが、現実世界においても、良かれと思って[投げかけた/投げかけられた]言葉は、時により呪いとして[受け取られる/受け取ってしまう]。

またその何気なく掛けた言葉ひとつにおいても、受け取り手の捉えようにより搾取をしていないと絶対に言い切れないので、普通に生きていく上には勿論、様々な人・コンテンツを応援している自らも無碍には特にできない話だと思った。

ギリシャ神話が好きな私*2は、ガニュメデスとゼウスの話をされ、「なるほど理解した」状態になるのも一瞬でした。

ギリシャ神話は私利私欲のために自分の都合のいい神・人間を当たり前に誘拐する話が多いが、現実世界にて"奪う"という直接的な行為を起こしたジャノメと、ひたすらに「美しい」と持て囃すだけの人々はヒバリにとって、どちらも神話の中の俗物達と同様であったのだろうなと思う。

ヒバリは皮肉にもジャノメの門下であった同窓会長ハナブサ・イクオにより、今まで評されていた美しさとは別の価値を自らに見出すきっかけを与えられて、未来へ希望の轍を敷かれたように見えたが、その再会がなければヒバリはどのような人生を歩むこととなっていただろうか。

 冒頭からこの劇団には"美少年"が居ないと宣言しつつも、外堀から埋めていくように4人が複数の役を演じ、ぐるぐると囲い込むようにロジカルに"美少年 アゲ・ヒバリ"という物語の芯に、1時間という決して長くはない時間で様々なテーマを含みつつ辿り着いていく様は非常に爽快であった。面白すぎた。

YouTubeだと46:23頃〜、ジャノメであった永島さんがイクオに握手をしてからのクルッと回転してそのまま同級生フジタニ・ユキミになり、ユキミに対してとヒバリに対してユキオはまるで回転扉の如く各人の間を移動し、時系列は異なるが同様にユキオ自らの個展に誘うことを可能としていて、このひとくだりだけで約1分4回想・3人で4役を回していた。この舞台凄過ぎない???

舞台演劇ってここまでやれるんだな…良いものを観た。

 

 

1時間超えるやつはちょっと時間ないと観られないから、また後日。

YouTube、有難すぎるな…。

めちゃくちゃ楽しんでいて対価を払いたいという気持ちしかないので、今度劇団の本公演がある時は絶対観に行こう。

*1:二人芝居のはずなのに、中屋敷さんが大村さんに舞台上に連れてこられて、中屋敷さんも、「二人芝居なんだけど…」と永島さんも大困惑していたのはめちゃくちゃウケた。

*2:※ペルセポネーがハーデースに誘拐される話を小2で読書感想文に書いた。